2018.1.20/上海出張
日本の家具ブランドとして上海で展開してほしいとのオファーをいただいて、商談というよりはお互いの信頼関係の確認をしに亀井と2人で中国に行ってきた。
結果は「トラブルがあったら悪いのは俺たちだ」と思えるような最高に素敵な人たちで、今秋に開催される上海デザインショーで出品させてもらえる事になりそうだ。
この話の始まりはインスタグラムに載せたこの写真が切っ掛けになる。
まずこれがインスタグラムジャパンに取り上げてもらってドカンと拡散された。
それで、「日本にかわいい家具職人がいる」と武内マイちゃんが中国のnetで話題になったらしい。
それを切っ掛けにKOMAを知った家具職人の夫婦が台湾から技術交流に来てくれた。
その夫婦と木工関係で知り合いだったのが今回のご縁に繋がったコウさんだ。
11月の初めだったろうかKOMAshopから工房に電話があった。
上海で木工教室を運営しているという2人が今ショップに来ていて、急だけどこれから工房を見学したいと言っている。
普段はお断りすることも多いが、ちょうど作業も一段落しているタイミングだったこともあって工房にコウさん達がやってきた。
日本の内装大手企業で10年努めていたコウさんは日本語が堪能でコミュニケーションには困らない。
日本の木工技術が大好きで鉋などの道具もコレクションしているそうで、家具の作り方、鉋や刀などの道具の使い方などひととおり説明してずいぶん熱心に聞いて体験してくれた。
数時間だがお互いに楽しく技術交流ができた。
すると
「実は今日来た目的は他にもあるんです」とコウさん。
「中国でKOMAブランドを展開しないか」とのことだ。
特に海外だとダマされるなんて聞くけど俺たちなんてダマすメリットもないだろう。
楽しそうだから二つ返事で快諾した。
無い知恵しぼって考えてみてもKOMAに失って困るものが見つからない。
たまたまの偶然とタイミングが重なっただけのただありがたい話で、それならとりあえず中国に行ってみよう!というわけだ。
赤く光る漢字のネオン看板が並ぶ夜の通りに立つと中華圏に来たのだと実感する。
ギラギラに装飾された観光フェリーに混ざって錆びた貨物船が行き交う運河の対岸に見えるレンガ造りの強堅で落ち着いた町並みは元はイギリス領地だったと教えてくれた。
細い通りを挟んだ左隣は全く雰囲気を変えて、洒落た時計台が印象的な元フランス領地が広がる。
そのずっと左側には近代的な高層ビル群が賑やかに並んでいる。
夜の冷たい霧雨も手伝ってかその古今東西が交わる美しさが異様に感じて少し恐くなった。
上海にはファッションも車もインテリアも世界のハイブランドが東京よりも大きな店を構えている。
家具やインテリアだけの大きなショッピングモールがいくつもあって家具屋の多さに驚いた。
人々のマナーが悪いなんて全く無い。
細かい事はお互いに気にせずおおらかであたたかい。
そう言えばコウさんが何者かということも詳しく知らずに上海に来ていたが、都市開発なども手掛ける台湾の財閥みたいな大きな会社の人だという事がわかった。
木工教室と言っても機械設備もしっかりしていてショップやカフェが併設された立派な施設だ。
インテリア専門の超デカいショッピングモールの最上階で中国の木工の歴史ミュージアムも手掛けていて「このモールはどこでも好きに使っていいよ〜」なんて言ってくれた。
なんでウチみたいな小さい会社に声かけてくれたの?と聞いたら、
「KOMAの家具は誰も真似できないから」と言ってくれた。
そうでないと中国ではあっさりパクられて商売にならないそうだ。
今、中国では国を挙げて職人の手技を大切する動が強まっていて中国全土から300人の様々なジャンルの工芸師が選抜されている。
それらを取材し紹介するメディアの役割もコウさんたちのプロジェクトの一つだ。
それにしてもその工芸師の方々の技術力はどれを見てもハンパじゃなく素晴らしい。
そしてエルメスなどのハイブランドがプロデュースして次々と新しいカタチになって展開され始めている。
透けるほどに薄い白磁のお皿。
指ではじいた音の反響で薄さを計りながら創られている。
「コーン」と響くその音色は楽器のように美しく店内のBGMとしても使われていたほどだ。
表情豊かで美しい翡翠(ひすい)の茶器。
1ミリにも満たない薄い竹で複雑に組み込まれた香炉。
家具も沢山あってそれはそれは素晴らしかった。
超ハイレベルな工芸の技と世界のハイブランドのセンスがガッチリ手を組んだこのレベルの商品を常設して扱っている店は東京では見たことがない。
世界のトップのしっぽの先がチラリと見えた気がした。
自分たちの未熟さが知れて腹の底から震え出すほど嬉しかった。
新しいチャレンジはいつも初心にかえらせてくれる。
まずは今秋の上海デザインショーへの出品を目指して準備開始だ。
とにかくコウさん達には何から何まで本当にお世話になった。
行きたいところは様々手配して何処へでも連れて行ってくれて上海の家具市場のピンからキリまで見せてくれた。
毎食のご飯は信じられないくらい豪華に振る舞ってくれて朝まで酒にも付き合ってくれた。
自分たちのやっている事、これからやりたい事を静かだけど熱をこめて一生懸命に話してくれた。
そうやって伏し目がちに訥々と話す彼らを見て、なんだか素敵だなぁと思った。
最終日にコウさんの木工教室の生徒さんを中心に行ったワークショップは皆さん興味津々で凄く喜んでもらえて嬉しかった。
次回は春にコウさん達が東京に来る予定だ。
心からのおもてなしができるように今からプランを考えておこうと思う。