2015,12,19/荻野 隆雄
感謝する人たち3のつづき。
【荻野 隆雄】
荻坊とよんでいる。
2008年。
ちょうど俺が30歳の頃。
25歳で始めたKOMAは(株)KOMAになった。
若い衆に対して今でもかなり厳しいが当時はそれの比ではない。
例えば、声が小さい時。
現在は「声が小せえ〜」
当時は「なに言ってっか聞こえねえんだよ!ブッ殺すぞ!」
例えば、遅刻しちゃったら。
現在は、昨日も遅かったしな〜でなにも言わない。
当時は、ヘタしたらクビだ。
そんな環境だから当然誰もついてこない。
あの頃いてくれた子たちには本当に申し訳ないと思うが、今でもみんな連絡をくれて繋がれている事に感謝している。
そんな時に入ってきたのが24歳の荻坊だ。
当然、例に漏れず半年程の付き合いだった。
「オマエはウチでやってくの無理じゃね?」
みたいなニュアンスだったと思う。
思い返してみると自己嫌悪に陥りそうになる。。
まだ若くて血の気が多すぎた。
過去には戻れないから今に活かす。
などと言い訳ばかりがうかんでしまう。。
その時、荻坊は「ゼッテエ諦めないっす!」と他の家具工房に移った。
「でもたまに遊びに来てイイっすか?」とも言ってくれた。
その宣言どおりちょくちょく顔を出してくれた。
おかげで関係は繋がった。
ありがたい。
2年が経った2010年。
「会社がヒマで今月休みなんすよ」と荻坊。
「だったらその間手伝ってくれよ〜」
で事件が起こる。
右手中指切断の大怪我だ。
「119番って何番だ!!?」
なんてパニクリながら救急車を呼んだ。
手術とリハビリを終え半年後、紆余曲折は割愛するが、
1年後に独立を前提でKOMAに戻ってくる事になる。
一緒に働くのは2度目だ。
売上や自身の製産スキルなど、独立を想定したトライは厳しいものだった。
荻坊にとって落ち込む結果になった。
そして、家具職人の道を諦めることになる。
そんな話し合いをして工場で2人、深夜までスケボーをして盛り上がった。
荻坊は地元である埼玉に戻り、「やっぱり木に携わりたい」と盆栽屋に就職する。
2度目も何も助けになることは出来なかった。
それから徐々に厳しすぎる環境ではなくなり、やっと人材が定着してきたか?などと思っていた。
2014年の7月、2年目の若い衆が突然バックレた。
今までにも数人いるが、古今東西よくいる若者のよくある姿で、少なからず存在する。
そういった相手には、身の丈以上の期待をしないでほどほどにが大切だ。ということを学んだ。
10月、入社1年半の若い衆が辞めた。
ヤル気もあって、ちょうど技術も伸びてきて、今後が凄く楽しみなヤツだったが、会社として彼の家族の信頼を得れなかった事に本当に申し訳ないと思っている。
自分よりも家族を選んだ彼を尊敬している。
役割、それに伴う給与、様々な基準やルールなどなどの明確化が必要だと分かった。
何れにせよ若い衆が続かない。
もうイヤでも反省するしかない。
自分に問題がある。
職人で残ったのは、俺、亀井、6年目だが半独立状態の海老沢、今は仕上げのエースとして活躍中だが当時は、まだまだの舞子の4人だけになった。
困った。仕事はあるけど人がいない。
この状況にただの素人はキツい。
会社との相性もある。。。
どうするか。。。
2014年11月のある深夜、荻坊に会いに行った。
群馬かどこかの駅前で、地べたに座り酒盛りをしながらスケーボーをした。
「助けてくれねえか?」を言いに行った。
「そこまで言われて断る理由は無いっすよ!」
戻ってきてくれた。
本当にありがたい。
荻坊と一緒に働くのはこれで3度目になる。
前の2度とも荻坊の助けになる事ができなかった。
そして3度目は、俺が助けてもらう事になった。
ギブアンドテイクになってねえ。
荻坊は職人としての成長を見せた。
特に「鉋」は急成長だった。
年内に俺に追いつくなんて言ってた。
そして何より、会社全体の事や若い衆の教育にも目を向けてくれた。
そして今、荻坊は営業に転向してくれた。
「KOMAってもったいないっすよ」
「KOMAに足りないのは営業力」
「もっといろんな人に知ってほしい」
また助けてもらう事になった。
気さくで明るい性根は人に可愛がられる。一つの結果が大きく彼を成長させるだろうと思う。
最近、俺からの身の丈以上の期待と要望に向き合い応える覚悟が見えてきたように思う。
そんな荻坊は俺にとって今、希望の光であり最も信頼出来る人間の一人だ。
そして何より、「黙って信じて待てば良い」と思える切っ掛けを創ってくれたように思う。
これは会社経営にとって大きな進歩だ。
スケボー スノボー サーフィンと公私ともに仲間なのである!
そしてこれからも助けてもらうのである!!笑
誰よりも人との繋がりを大切にする荻坊が紹介してくれたのが、今や椅子仕上げのエースとして活躍している武内舞子だった。
武内舞子につづく